どんなゲーム機?
Xbox360はWindowsで有名なマイクロソフトの開発で、前の機種Xboxに続いて2機目の新型ゲーム機として登場しました。2005年に北米で、そして2006年に日本で発売されました。その頃のゲーム機市場はほとんどソニーのPlayStation 2(PS2)によって支配されていましたが、Xbox 360はもっと高品質なグラフィックスとネットワーク機能を前面に押し出し、新たなゲーム機全面競争を引き起こすことになりました。
Xbox 360の発売前の期待感は高かったものの、日本市場においては、Xboxブランドの知名度や認知度がそれほど高くなく、一部のゲーマーくらいしか反応していない状況でした。ゲームのラインアップも日本のゲーマーの好みに合っていたかというとほとんど海外のゲームが発売されていたため少しずれており、初期の受け入れられ方は必ずしも良いものではありませんでした。
逆に言うと、海外の人気ゲームを多く取り扱っていたため、洋ゲー好きのユーザーからの支持を得ました。発売当初のXbox 360は高度なグラフィックス能力や標準的なオンラインマルチプレイ機能など、標準に持っているその性能と機能性から一部のハードコアゲーマーやIT精通者からは高く評価されていました。
しかし、日本市場においては、依然としてソニーと任天堂が主導権を握っており、Xbox 360はそれらの巨人と戦うこととなりましたが日本のゲームの面白さを上回るためのその壁はめちゃくちゃ厚く、日本のユーザーを増やすことに苦戦しました。それに加えて最悪なことに、Xbox 360の初期型にはハードウェアの信頼性問題(レッドリング・オブ・デス)があり、これもユーザーの信頼を損なう一因となりました。
Xbox 360 本体でランプが赤く点滅している場合のトラブルシューティング – https://support.xbox.com/ja-JP/help/xbox-360/store/flashing-lights-solution 新型Xbox360、旧モデルと同じくディスクにキズが付くことが明らかに – https://gigazine.net/news/20100617_xbox360_disc/
それでも、Xbox 360は徐々にその地位を築き上げ、日本以外の海外市場では大きな成功を収めました。その後、Xbox 360は豊富なソフトウェアラインアップと優れたオンラインサービス(Xbox Live)を提供し、多くのユーザーから支持を受けることとなりました。
環境の良さは一部の日本のゲーム開発者からも支持を受け、『ブルードラゴン』や『ロストオデッセイ』など、日本市場向けの超大作タイトルをリリースすることで、徐々に市場への浸透を図りました。
Xbox 360はまた、実績解除やゲーマータグといった今では当たり前の気持ち良い機能を提供し始めたのも貢献のひとつかもしれません。これらの機能は後のゲーム業界全体に大きな影響を与えました。さらに、Xbox Live Arcadeを通じてインディーゲームをダウンロード販売するという新しいビジネスモデルも確立しました。今ではNintendo Switchの「Indie World」、PS4/5の「PlayStation Store」と当たり前のように紹介され販売されるようになりました。これにより、小規模な開発チームでも自分たちのゲームを広く公開できるようになりました。
結果的に、Xbox 360は日本市場での地位確立にめちゃくちゃ苦労しながらも、ゲーム機としての新しい可能性を示す存在となりました。その一方で、日本市場のユーザーが求める内容に対する理解と、それを満たすソフトウェアの提供が不十分だったことが、市場浸透は難しかったと(今となっては)思います。
性能・スペック
製品名 | Xbox 360(サンロクマル) | |
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メーカー | (株)マイクロソフト | |
CPU | 製品名 | IBM PowerPCカスタム |
コア | 対称型 3コア | |
動作クロック | 3.2GHz | |
キャッシュ | 1MB L2キャッシュ | |
バス | 256bit | |
電圧 | – | |
FSB帯域 | 21.6GB/sec | |
製造プロセス | 90nm | |
スレッド | 各コア2スレッド 合計6スレッド | |
浮動小数点演算性能 | 計 115.2 Gflops ○VMXのSIMD演算性能 VMXユニット 3つ(各コアに1つずつ) 各スレッドに128個のVMX-128レジスタ 単精度オペレーション/サイクル 24(3つ×4way×2サイクル) ピーク性能 76.8GFLOPS (24オペレーション×3.2GHz) ○浮動小数点演算ユニット(FPU)の性能 浮動小数点演算ユニット 6(各コアに2つ) 単精度オペレーション/サイクル 12(6つ×2サイクル) ピーク性能 38.4GFLOPS (12オペレーション×3.2GHz) | |
メインメモリ | メモリ | GDDR3 RAM 512MB |
周波数 | 700MHz | |
バス | 256bit | |
転送速度 | 22.4GB/s | |
グラフィック | グラフィックス コア | ATI カスタムグラフィックプロセッサ (R52x?) |
メモリバス | 4,096bit | |
周波数 | 500MHz | |
メモリ帯域 | 256GB/sec | |
電圧 | – | |
ビデオメモリ | 10MB eDRAM | |
浮動小数点演算器 | 並列48基 (シェーダーパイプラインへの動的割り当て可能) | |
フィルレート | 16Gpixel/sec (MSAA 4x時) | |
シェーダー演算性能 | 480億回/sec | |
ポリゴン演算性能 | 5億トライアングル/sec | |
統合型シェーダーアーキテクチャ | ||
サウンド | サウンド | 48KHz 16ビットオーディオ対応 サラウンド音声出力 |
同時発音数 | 256音以上 | |
性能 | 320チャンネルの音声を同時デコード 32ビットオーディオ処理 | |
記憶装置 | ハードディスク | 20GB HDD (取り外し&アップグレード可能) |
記憶メモリ | 64MB メモリユニット | |
メディア | メディア | DVD-ROM |
対応メディア | DVDビデオ DVD-ROM DVD-R/RW DVD+R/RW 音楽CD(CD-DA) CD-ROM CD-R CD-RW WMA CD MP3 CD JPEG Photo CD | |
転送速度 | DVD 12倍速 (16.6MB/s) | |
その他 | 通信 | イーサネット端子内蔵 IEEE 802.11a/b/g対応ワイヤレスLAN(オプション) ビデオカメラ(オプション対応予定) |
浮動小数点演算性能 | 1T FLOPS | |
I/O | ワイヤレスコントローラ[最大4台] USB2.0端子 ×3 メモリユニットスロット ×2 | |
ハイビジョン | 16:9のワイド画面、D4(720p)およびD3(1080i)表示 アンチエイリアシング対応 ハイビジョンビデオ出力 標準ビデオ映像出力 | |
機能 | Windows Media Center Extender機能内蔵 携帯音楽プレーヤーやデジタルカメラ、 WinXP対応PCに保存されているデータの再生 HDDへの音楽の取り込み 全てのゲームで使用可能なカスタム再生リスト 音楽再生時の3D視覚エフェクト | |
希望小売価格 | \37,900 | |
外形寸法 | W309mm・H83mm・D258mm | |
質量 | – | |
発売日 | 2005年12月10日 |
スペック解説
CPU
IBMと共同開発された「Xenon」と呼ばれるカスタムプロセッサを搭載しています。このプロセッサは非常に特殊な構成で、対称の3つのコアを持っています。この頃の通常のゲーム機のCPUは大体性能の高い1コアだけですが、Xbox 360はこの3つのコアを同時に使用することでめちゃくちゃ高い処理能力を実現しました。
Microsoftはずっとペアのようにタッグを組んでいたIntelが近くにいたため、PCや初代XboxのようにIntelのx86プロセッサが採用されると思われていましたが、蓋を開けると実際そうではありませんでした。
逆に、このタイミングでOSのライバルであるAppleのMacシリーズで旧来採用されてきた「PowerPC」プロセッサを採用したことで話題となりました。この頃のMicrosoftは “Microsoft Anywhere”(デファクトスタンダード化)を推進しており、仲のいいIntelとあえて組まず、今回のPowerPC新規採用もその一環ではないかと言われています。
PowerPC系プロセッサは高性能かつ低消費電力で、家電用プロセッサとしても注目されているプロセッサではありました。Intelのx86アーキテクチャとは違い、誰かが実権を握っていて拡張させてくれない、ということがなくなるのが採用基準だったかもしれません。デメリットとしては価格が高いため、家庭用としてはなかなか普及していませんでした。このXbox360では相当な量を一気に発注してコストを圧縮したのではとも言われています。
CPU のここが凄い!
低消費電力でありながら高性能対称3コアのCPUでいろんな処理を同時にこなす能力があること!
IntelのPC用CPUを採用すれば開発しなくて済むのに、IBMと共同開発してゲームに特化した最強プロセッサを作り上げたことがPC業界からのゲーム機への本気と言える。
グラフィック
グラフィックも、前ゲーム機Xboxで採用されたnVidia社グラフィックプロセッサからATI社(現AMD)製のグラフィックプロセッサへ変更されています。
GPU内部に組み込まれたNEC製メモリ(eDRAM)が驚異的の256GB/sで接続されており、当時Xbox360発売後はすぐPS3の登場が控えていたため、PS2のeDRAM(48GB/s)から更にパワーアップしてくるだろうというPS3への対抗心が見られました。(PS3登場後の実際のVRAMスペックは256MB容量重視の38.4 GB/sでしたが)
eDRAMではアンチエイリアスやZ処理などの加工系処理が随時行われ、この大容量・超高速によってCPU負荷0で処理できました。
予想を超えるモンスターだったXbox 360のGPU – https://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0520/kaigai181.htm
グラフィックのここが凄い!
PC向けGPUでも存在していないとんでもない転送速度のハイスペック性能を実現していること!
ゲーム機に求められる最強グラフィックス性能のために、必要なメモリ帯域と一つの家電として求められる低コストの両立が特殊なeDRAM搭載でできている。
一般的に性能を高くするとチップの大きさが大きくなり、その分コストがめちゃくちゃ高くなるが、このeDRAMで超特殊な方法で外に追いやることでメインのチップの大きさを小さくすることでコストを抑えている。