どんなゲーム機?
PlayStation 2(プレイステーション2、PS2)は、ソニーが2000年3月4日に発売した家庭用ゲーム機です。発売日まで連日異なるCMが用意されていて、見るたびにわくわくしていたのは今でも思い出されます。
PlayStationシリーズの第二世代目に当たり、前世代のPlayStationで任天堂のNINTENDO64、SEGAのSEGASATURNを破り、シェア1位の座を勝ち取ったSONYのイケイケ状態で本機種を発表し、完全に話題となりました。
PS2はその高度なグラフィック表現力と豊富なゲームラインナップにより、全世界で約1億5500万台を販売し、ゲーム機としては歴史上最も成功したハードとなりました。(次点はNintendoDSの1億5,402万台)
当時注目されていたのは「DVDプレイヤー機能」と「圧倒的なグラフィック性能」です。当時はDVDプレイヤーデッキを普通に購入しようとした場合6~10万円程で非常に高嶺の花でした。しかし、このPlayStation2の登場で綺麗でハイスペックなゲームが遊べてDVDも見れる。そして価格は39,800円という価格で市場の低価格化とともに活性化にも繋がりました。
また、互換性も重視され、PlayStation(PS)のゲームソフトをそのまま遊ぶことができたのも大きな特徴です。当時シェア1位を獲得したPlayStationとの互換性があり、PlayStaion2だけでなくPlayStationのゲームも遊べる点はソフトウェア資産として大事にしていることが伺えます。任天堂もファミコンの時代から構想はありましたが、携帯ゲーム機→据え置き型ゲーム機のスーパーゲームボーイのみでしか実現しておらず、この点はSONYに先を越された展開となりました。
そして本機種と同時発売されたゲームソフト、ナムコ(現:バンダイナムコゲームス)の「リッジレーサーV」の映像は子供だけなく大人も本物と見分けがつかないとマスコミも含めて大変話題となりました。
ゲームソフトインプレッション
発売後は長い間ゲームソフトの品質と量の両方で他のゲーム機を圧倒し、ニンテンドーのゲームキューブとマイクロソフトのXboxが主な競合でしたが、PS2はこれらと比較してもその人気と市場支配力を維持し続けました。
仕様・スペック
PS2のハードウェアはその当時としては非常に高性能で、以下の主要なスペックを持っていました。CPUは「Emotion Engine」と呼ばれるソニー独自の64ビットRISCプロセッサで、そのクロック周波数は294.912MHzでした。また、メインメモリは32MBのRAMを搭載し、グラフィックスは「Graphics Synthesizer」という専用のGPUを採用、4MBのVRAMを持ち、75MHzのクロック周波数で動作していました。このGPUは最大75万ポリゴン/秒の描画能力を持つとされていました。
また、PS2はDVD-ROMを主要なゲームメディアとして採用し、8MBのメモリーカードをストレージとして使用しました。通信機能としては、PS2の初期モデルではEthernetポートが搭載されておらず、後のモデルでオプショナルなネットワークアダプターが追加されました。
PS2のスペックは発売時点での一般的なパソコンと比較しても高性能で、その強力なハードウェアは豊富なゲームラインナップと融合して、当時のゲーム機市場においてPS2がトップポジションを獲得するための大きな推進力となりました。
製品名 | PlayStation2 | |
---|---|---|
メーカー | SCE (SONY Computer Entertainment) | |
CPU | 製品名 | Emotion Engine (エモーションエンジン) |
CPUコア | 128ビット RISC (MIPS・-subset) | |
動作クロック | 294.912MHz | |
整数演算ユニット | 64ビット (2-way superscalar) | |
マルチメディア拡張命令 | 128ビット×107種類 | |
GPR(整数レジスタ) | 128ビット×32本 | |
TLB | 48ダブルエントリー | |
キャッシュ | 命令キャッシュ: 16KB (2-way) データキャッシュ: 8KB (2-way) スクラッチパッド: 16KB (Dual-port) | |
DMA | 10-channel | |
コ・プロセッサ | FPU (浮動小数点乗加算器×1、浮動小数点割算器×3) | |
マイクロ命令用メモリ | 命令: 4KB データ: 4KB | |
ベクトル演算ユニット | VU0+VU1 (浮動小数点乗加算器×9、浮動小数点割算器×3) | |
マイクロ命令用メモリ | 命令: 16KB データ: 16KB | |
浮動小数点演算性能 | 6.2G FLOPS/秒 | |
三次元CG座標演算性能 | 6600万ポリゴン/秒 | |
座標変換+光源計算 | 3800万ポリゴン/秒 | |
座標変換+フォグ | 3600万ポリゴン/秒 | |
曲面生成(ベジェ) | 1600万ポリゴン/秒 | |
IPU | MPEG2 マクロブロックレイヤ・デコーダ | |
画像処理速度 | 1億5000万ピクセル/秒 | |
製造プロセス | 0.25μm→0.18μm | |
コア電圧 | 1.8V | |
消費電力 | 15W | |
メタル配線層数 | 4 | |
総トランジスタ数 | 1050万 | |
ダイサイズ | 240平方ミリメートル | |
パッケージ | 540ピン PBGA | |
メインメモリ | メインメモリ | Direct RDRAM (ダイレクト・ラムバス) PC800 |
メモリ容量 | 32MB (16MB×2) | |
バス幅 | 32bit (16ビット×2) | |
バンド幅 | 3.2GB/秒 | |
周波数 | 800MHz | |
グラフィック | 製品名 | Graphic Synthesizer (グラフィックシンセサイザー) |
コア | DRAM内蔵並列描画プロセッサ | |
クロック周波数 | 147.456MHz | |
DRAMバス・バンド幅 | 48GB/秒 | |
内部総DRAMバス幅 | 2560ビット | |
Readバス幅 | 1024ビット | |
Writeバス幅 | 1024ビット | |
Textureバス幅 | 512ビット | |
混載DRAM容量 | 4MB | |
DRAM周波数 | 150MHz | |
最大表示色数 | RGB 32ビット(RGBA 8ビット) | |
Zバッファ | 32ビット | |
ピクセル・フィルレート | 24億ピクセル/秒(Z,A)、12億ピクセル/秒(Z,A,T) | |
バーティクル描画性能 | 1億5000万個/秒 | |
ポリゴン描画性能 | 7500万個/秒(微小ポリゴン) 5000万個/秒(48pix四角形、Z,A) 3000万個/秒(50pix三角形、Z,A) 2500万個/秒(48pix四角形、Z,A,T) | |
スプライト描画性能 | 1876万個/秒 | |
画像出力フォーマット | NTSC/PAL、DTV、VESA(最大1280×1024ドット) | |
製造プロセス | 0.25μm | |
総トランジスタ数 | 4300万トランジスタ | |
ダイサイズ | 279平方ミリメートル | |
パッケージ | 384ピンBGA | |
画像処理機能 | Texture Mapping(テクスチャマッピング) Bump Mapping(バンプマッピング) Fogging(フォギング) Alpha Blending(アルファブレンディング) Bi-/Trilinear Filtering(バイ/トライリニアフィルタ) MIPMAP(ミップマップ) Anti-aliasing(アンチエイリアシング) Multi-pass Rendering(マルチパスレンダリング) | |
サウンド | サウンド | SPU2 + CPU |
同時発音数 | ADPCM:48ch(SPU2)+ソフト音源数 | |
サンプリング周波数 | 44.1/48KHz | |
ドライブ | 対応ディスク | CD-ROM/DVD-ROM |
対応フォーマット | PS1用CD-ROM PS2用CD-ROM/DVD-ROM CD-DA(音楽CD) DVD-Video | |
ドライブ性能 | CD-ROM 24倍速(3300KB/秒) DVD-ROM 4倍速 | |
インターフェイス | 製品名 | I/O Processor |
CPUコア | PlayStation CPU+ | |
クロック周波数 | 33.8688MHz/36.864MHz | |
Sub-BUS | 32ビット | |
入出力 | IEEE1394(S400)、USB | |
通信ポート | PCカード(PCMCIA)で対応 |
スペック解説
CPU
東芝と共同開発した「Emotion Engine」プロセッサを採用しました。MIPSIIIアーキテクチャベースのCPUコアを中心に、「VU0」「VU1」と呼ばれる「ベクトル演算ユニット」(VU)、 IPU(Image Processing Unit)と呼ばれる「MPEG2デコーダ」、RDRAMへのI/F回路などで構成されています。
クロック周波数294.912MHzの64ビットRISCプロセッサで、非常に高速な演算能力を持つと共に、ハードウェアレベルでのサウンドとグラフィックスの処理能力を備えていました。
当時としてはありえないほど高性能で、軍事転用規制対象になったことはニュースにもなりました。
PS2が軍事転用の恐れがあるとして 通常兵器関連汎用品に指定される – http://gamez.itmedia.co.jp/games/gsnews/0004/17/news02.html
「業務用最高性能のグラフィック・ワークステーションをも凌駕する描画プロセッサ」とSCEIの広報文にも掲載されています。
次世代プレイステーション向け世界最高速の128ビットCPU Emotion Engine を開発 – http://www.sie.com/content/dam/corporate/jp/corporate/release/pdf/990302_3.pdf
当初は0.25μmプロセスで製造されていたEEが、SCPH-30000から0.18μmプロセスで製造され搭載された。微細プロセス化することでコストが安くなり、また発熱も少なくなって背面ファンも静音ファンが搭載されるようになった。
Emotion EngineはPlayStation2だけでなく、一部のSONY製のTV「WEGA」やAV機器のQUALIA 005にも採用された。
『PSX』等に搭載しているCPU「エモーションエンジン」および描画プロセッサー「グラフィックス・シンセサイザ」を採用し、高速で快適な操作性を実現する新しいGUI“XMB”を搭載しました。 – http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200408/08-0819/
CPU のここが凄い!
演算能力・グラフィックス・サウンド全て最強の独自CPUを採用したこと!
Emotion Engineは、その高速な演算能力と同時にサウンドとグラフィックスの処理も行うことが可能な、当時としては画期的なCPUでした。その能力は高度なゲーム表現を可能にしました。そしてプロセッサ自体を進化させて、他の分野へ転用して革命を起こそうと試みた点は他にありません。
グラフィック
CPUと同じく有名な独自のグラフィックプロセッサ「Graphics Synthesizer」を採用しました。このGPUは4MBのVRAMを持ち、75MHzのクロック周波数で動作していました。このGPUは最大75万ポリゴン/秒の描画能力を持ち、当時としては非常に高度な3D描画を可能にしていました。
ビデオメモリの帯域は48GB/sで容量は4MBで、この公表されている「48GB/s」という数字は単一バスではなく、Readバス幅1024bit(19.2GB/s)、Whiteバス幅1024bit(19.2GB/s)、テクスチャ専用バス幅512bit(9.8GB/s)を合計したもの。それでも2000年発売にも関わらず、2005年に発売されたハイエンドビデオカードにせまる転送性能を誇っています。(ATi Radeon X800 XT (32GB/s) / nVidia GeForce 7800 GTX (38.4GB/s) あたりの転送速度を凌駕)
しかし、ビデオメモリの少なさが問題でした。VGA解像度のフルカラー画面(1.1MB)を表示する場合ダブルバッファ使用で倍の2.2MBが必要になり、さらに32bitZバッファが入ると残りが0.7MBしか残らなくなってしまう。PCのビデオカードではテクスチャ圧縮機能があるが、このGSには搭載されてなく他に逃げ道が無いため各ゲームメーカーは過度なグラフィックを表示しないか、せこせこ展開・破棄を繰り返す努力を強いられていました。
日本のゲームメーカーはこのテクニックに長けていたため、PS2のゲームはグラフィックが綺麗であると評価されていましたが、欧米のゲームメーカーはこのテクニックに慣れていなかったため、PS2のゲームはグラフィックが汚いと評価されていました。しかし、その後のゲーム機のグラフィック性能が向上していくにつれて、PS2のグラフィック性能は高いと評価されるようになりました。
グラフィックのここが凄い!
とんでもなく帯域の広いVRAMを内部搭載したGPUを採用したこと!
PS2のGPUは当時としては非常に高性能であり、その強力な描画能力はプレイステーション2のゲームが他のゲーム機と比較して顕著に美しいグラフィックを持つ一因でした。
メモリ
PS2は32MBのRDRAMを搭載しており、これは当時のゲーム機としては大きな容量でした。これにより、複雑なゲームの処理や大量のゲームデータが扱えるようになりました。
RDRAMは「Rambus DRAM」の略で、Rambus社による基本設計で同社がライセンスする、SDRAMモジュールの方式の一種です。今となってはDDR SDRAMに取って代わられていますが、当時は高速なメモリとして注目されていました。
Rambas社の売り込み力と高価なライセンス費用は今でも言い伝えられる伝説となっています。RDRAMは確かにその時はハイスペックでしたが、DDRはスピードの面でどんどん発展し続け、しかも、RDRAMより数段安価であったため、RDRAMは大したシェアを獲得することなくほとんど使われなくなりました。
このRDRAMを採用していたPS2は地味にこのメモリコストが高かったことが容易に想像できます。
メモリのここが凄い!
高コストなRDRAMを採用したこと!
PS2の大容量で高速なメモリは、豊富で複雑なゲームの運用を支え、ユーザーにリッチなゲーム体験を提供しました。
サウンド
同時発音数48音はPSのほぼ2倍、サウンドメモリ2MBで考えると4倍もの性能向上といえます。チップ内部は48KHz動作のため、44.1KHz時はソフトウェアエミュレーションで動作しています。
サウンドのここが凄い!
任天堂に売り込んだだけある妥協のないサウンドであること!
ゲームだけでなくDVDも再生できる能力はサウンドチップにも表れています。ゲーム機をリビングに配置する構想で、ホームシアターのような環境を想定していたことが伺えます。
通信
本機種にはUSB1.1/IEEE1394(i.Link)/PCカードバスorエクスパンション・ベイ等拡張インターフェースが多数あリました。しかし、使用方法が当初の計画とは異なったようで、マイナーチェンジの後継機種では非搭載となったインターフェースも結構あります。
USB1.1(周辺機器を接続を想定) ⇒ キーボード・マウスくらいで周辺機器はさほど登場せず
IEEE1394(PS2通信対戦を想定) ⇒ 使用環境無し、のちに廃止
PCカード LANカード・モデムの接続 ⇒ 外付けHDD出るも廃止、エクスパンションベイに変更 ⇒ SCPH-70000から小型化のためエクスパンション・ベイも廃止
当初は本機種の同世代である「PlayStation Portable」と同じく「ゲームソフトをネットワーク経由で提供」というコンセプトを掲げており、後期には別売りでネットワークアダプターが追加され、オンラインゲームの体験が可能となりました。ただし、発売当時に今ほど常時接続ブロードバンド回線が普及していなかったため、大きく盛り上がることはなく、ネットワーク機能は一部のオンライン対戦用などに使用されていました。
通信のここが凄い!
さまざまな可能性を賭けていろんなインターフェースを搭載したこと!
そんなに必要かと思われるインターフェースも搭載していたことで、後のハードウェアの拡張性を示唆していたことが伺えます。ソニーは電気製品メーカーですから、この辺りは得意分野だったと思います。
メディア
発売当時は超高価・ハイエンドの位にありそれほど普及していなかった、CDのおよそ14倍の容量を持つ大容量なDVD-ROMを採用しました。しかし全ての供給するソフトにではなく、ゲームソフトの容量に応じてコストが安く記録面が青いCD-ROM、コストが高く大容量かつ高速な読み込み速度のDVD-ROMどちらかを選択して供給されていました。
SCPH-50000からはDVD±R/RWに対応し、自分で作成したDVD-Videoなども再生できるようになりました。
メディアのここが凄い!
最強のDVD-ROMを採用したこと!
PS2のDVD-ROM採用は、大量のゲームデータを収められ、より複雑で大規模なゲームを提供することが可能になり、またDVDプレイヤーとしての機能も兼ね備えていたことが、ゲーム機だけでなくエンターテイメントハブとしての位置づけを強化しました。
ストレージ
PS2は内部ストレージはなく、メモリーカードを採用しました。メモリーカードは8MBの容量で、ゲームのセーブデータを保存することができました。
また、PS2のメモリーカードはPSのメモリーカードと互換性があり、PSのゲームソフトのセーブデータもそのまま使用することができました。
ストレージのここが凄い!
PS互換の大容量メモリーカードを採用したこと!
PS2のメモリーカードは大容量になり、多くのセーブデータをセーブできるようになったことで、さまざまなゲームを続けることが可能になりました。