DreamCast の凄いスペックまとめ

スポンサーリンク

どんなゲーム機?

当時、PlayStationにシェアを奪われていたセガサターンの次世代機として社運を賭けて開発され、1998年(平成10年)11月27日 セガ・エンタープライゼス(現:セガゲームス)が発売した家庭用ゲーム機です。

ドリームキャストの特徴は、発売当時(1998年)にしてはやけに高い性能とユニークすぎるデザインにありました。白を基調とした四角いデザインは、当時としては非常にモダンであり、他のゲーム機とは一線を画していました。(ライバルのPS2やXboxは真っ黒デザイン)

また、コントローラは大型のデザインで、中央には小型の液晶ディスプレイを持つ「ビジュアルメモリユニット(VMU)」を差し込むことができました。このVMUはメモリカードとしての機能だけでなく、小型のゲーム機としても機能し、本体から取り出して単体でゲームを楽しむことも可能でした。

ドリームキャストはオンラインゲームの先駆けともなりました。標準でモデムを内蔵しており、簡単にインターネット接続が可能でした。そのため、ドリームキャストはオンラインマルチプレイヤーゲームの普及に大きく貢献しました。テレホタイム(23〜8時)はドリームキャストで遊んでいた人も多くいたようです。特に、MMORPGの「ファンタシースターオンライン」は、コンソールでのオンラインゲームプレイの可能性を広く認知させる一助となりました。

あとは何と言ってもCMや番組で有名となった湯川専務の印象が強いですね。CMでは小学生のグループが「セガなんてだっせーよな」「プレステのほうがおもしろいよな」という完全な自虐ネタで大人気になりました。

ハードウェアの売上に多少貢献したものの、同世代であるPlayStation2やNINTENDO64にシェアを奪われ、ついに2001年1月15日の「構造改革プラン説明会」では本体200万台の不良在庫となったことを発表し生産を終了しました。これを機に現在の「他社へのソフト供給」へ転換することになりました。

この在庫200万台を捌くため、日本では9,900円という投げ売り状態の破格の定価に改定しました。

このゲーム機のあるあるとしては、ビジュアルメモリの電池消耗が激しいため価格の高いCR2032電池を交換しないで使用することです。結構な人が本体の電源を入れるたびに「ピーーー!!」という高いビープ音を響かせてからゲームを遊んでいたと思います。

仕様・スペック

項目サブ項目内容
製品名DreamCast (型名HKT-5000)
メーカーSEGA
CPU製品名日立 SH4
CPUコア128bitグラフィックス・エンジン内蔵RISC
動作クロック206MHz
浮動小数点演算性能1.4G FLOPS/秒
メインメモリメインメモリSDRAM
メモリ容量16MB (64Mbit(8MB)×2)
グラフィック製品名NEC PowerVR2 DC 100MHz
ポリゴン描画性能300万ポリゴン/秒
テクスチャメモリ8MB
画像処理機能Bump Mapping(バンプマッピング) Fogging(フォギング) Alpha Blending(アルファブレンディング) Trilinear Filtering(トライリニアフィルタ) MIPMAP(ミップマップ) Anti-aliasing(アンチエイリアシング) Multi-pass Rendering(マルチパスレンダリング) Environment Mapping(環境マッピング) Specular Effect(反射光エフェクト)
サウンドサウンドYAMAHA スーパー・インテリジェント・サウンド・プロセッサ – 32bit RISC CPU内蔵
同時発音数64チャンネル PCM/ADPCM
サウンドメモリ2MB
ドライブ対応ディスクGD-ROM CD-ROM
対応フォーマットDC用GD-ROM CD-DA(音楽CD)
ドライブ性能YAMAHA製 CD-ROM 12倍速(1800KB/秒) CAV(角速度一定)
その他モデムV34(33.6Kbps) V42/MNP5フルサポート
ビジュアルメモリCPU: 超低消費電力型8bit CPU 液晶 解像度: 横48dot 縦32dot モノクロ表示 サウンド: PWM音源 1ch 容量: 1Mbit(128KB)
OSMicrosoft Windows CE カスタム
GD-ROM
(Gigabyte Disc ROM)
最大容量 1GB
コントローラポート数4
消費電力22W

スペック解説

CPU

日立製作所(現在はルネサスエレクトロニクスに移管)が開発したのSuperHシリーズの一つであるSH-4を採用しています。セガの前世代のゲーム機である「セガサターン」も同社のSH-2プロセッサを採用しているため、実はSH系プロセッサの採用は2回目。SH-2/SH-4ともにセガのゲーム機用に設計開発されたもので、SH-4においてはRTCも内蔵しています。このプロセッサはWindowsCE機やIPコアとしても提供されました。

このSH-4は、RISC(Reduced Instruction Set Computer)アーキテクチャを採用しており、1命令あたりのサイクル数を減らすことで全体の処理速度を向上させています。クロック周波数は200MHzで、この数値自体も当時のゲーム機としては高速でした。

しかし、SH-4の真価は浮動小数点演算能力にあります。SH-4は、1クロックあたり2回の浮動小数点乗算と1回の浮動小数点加算を同時に行うことができ、この能力は最大で1.4GFLOPSに達します。これは、当時の一部のPCよりも高速であり、3Dゲームの描画など、計算負荷の高い処理を高速に行うことが可能でした。(グラフィックは浮動小数点計算のパワーが必要)

さらに、SH-4にはハードウェアによる3Dグラフィックスの描画支援機能が搭載されています。これにより、3D変換やライティングなどの複雑な処理をハードウェアレベルで高速に行うことができました。

しかし、これらの高性能な機能を最大限に引き出すには、開発者がSH-4のアーキテクチャを深く理解し、最適化されたコードを書く必要がありました。そのため、ドリームキャストのゲーム開発は一部の開発者にとっては難しいと感じられることもありました。しかし、その一方で、SH-4の性能を最大限に引き出せたゲームは非常に高品質な3Dグラフィックスを実現しており、その美麗さは他のゲーム機を圧倒していました。

 CPU のここが凄い!

高い浮動小数点演算能力とハードウェアによる3D描画支援機能が一つのチップに統合されていたこと!

ゲーム機仕様に作られたプロセッサはゲームに必要なスペックを理解して性能も良くコスパ良く作られています。

グラフィック

ドリームキャストのGPU「PowerVR2」はNECの半導体部門(後のルネサス エレクトロニクス)とVideoLogic(後のImagination Technologies)が共同開発したもので、グラフィックボードに搭載され単体発売もされています。これは元々ドリームキャスト用として開発されたものではなく、ATiやnVidiaのようにPC用グラフィックプロセッサとして製品展開させていたものを搭載しました。実際発売されたのはドリームキャスト発売後から約1年半後だったため、生産はドリームキャスト重視で行われていたように考えられます。

レンダリングの並列処理化やテクスチャ圧縮技術などを採用することで、300万ポリゴン/sec.、2億ピクセル/sec.の性能を実現しています。この性能は当時としてはやや時代遅れで、同時期の「nVidia RIVA TNT2」は900万ポリゴン/sec.、3億ピクセル/sec.と差が開いている。しかし、PowerVRシリーズの「低消費電力」「低発熱」の特徴がVR2でも発揮され、冷却や電源にコストを取られないためドリームキャストに採用されたのではないかと推測できます。

PowerVR2は、タイルベースレンダリングを採用しています。これは、画面を小さな領域(タイル)に分割して描画するという方式で、必要なメモリ帯域を削減し、全体の描画効率を向上させることができます。また、隠面消去処理を効率的に行うことが可能なため、無駄な描画を省くことができました。

さらに、PowerVR2は、開発者が細かい描画設定を制御できるように設計されていました。これにより、ゲームによって最適な描画設定を選択し、それぞれのゲームの視覚表現を最大限に引き立てることが可能でした。

しかし、この高性能なPowerVR2を最大限に活用するには、開発者がその特性を理解し、適切な描画設定を行う必要がありました。そのため、ドリームキャストのゲーム開発は、技術的な知識と経験を必要とする場面がありました。しかし、その難易度を乗り越えたゲームは、当時としては類い稀な美しいグラフィックスを実現していました。

 グラフィックのここが凄い!

多彩な視覚表現を実現していたこと!

高速なポリゴン描画能力と細かい描画設定の制御が可能であったことでゲームを盛り上げる多彩な視覚表現を実現していました。

メモリ

ドリームキャストのメモリ構成は、16MBのメインRAM、8MBのビデオRAM、そして2MBのサウンドRAMからなります。これは当時の家庭用ゲーム機としては非常に大きな容量であり、高解像度のグラフィックスや複雑なゲームロジック、高品質なサウンドを実現していました。

  • メインRAMは16MB : ゲームのロジックやAI、物理演算など、ゲームの「脳」の部分を動かすのに使われる。当時の家庭用ゲーム機としては大きな容量であり、複雑なゲームを動かすのに十分な容量でした。
  • ビデオRAMは8MB : グラフィックスデータ、つまりテクスチャや頂点情報などを保持するためのもの。これもまた当時のゲーム機としては大きな容量で、詳細な3Dモデルや広大な3D環境を実現するのに使われました。
  • サウンドRAMは2MB : サウンドデータを保持するためのもの。これにより、複雑なサウンドエフェクトや高品質な音楽をゲームに組み込むことが可能でした。

これらのメモリの容量は、当時のPCと比較しても遜色ないレベルでした。これにより、ドリームキャストはPCレベルの複雑さと詳細さを持つゲームを実現していました。

 メモリのここが凄い!

当時の家庭用ゲーム機としては大容量であり、PCレベルのゲームを可能にしたこと!

今となっては少なく感じますが、テレビの解像度は640x480px(ハイビジョンは720p)なので今ほど多くは必要なく、十分なメモリ量になっています。

通信

ドリームキャストは、その発売当時において他のゲーム機と全然違う特徴となっていたのが、内蔵モデムを標準装備していたことです。33.6Kbpsのモデムは、当時の家庭用ゲーム機としては画期的な存在でした。これにより、ドリームキャストは簡単にインターネットに接続することが可能でした。

ゲーム機の中では初のネットワーク初期装備でした。インタフェースの着脱が可能で、別売の100BASE-T(※2)仕様「ブロードバンドアダプタ」を装着することでブロードバンドのネットワークにも対応しました。(実際にはソフト側で10BASE-Tとしてしか使われなかったようです)

標準モデムがあることでゲームソフトのネットワーク対戦が簡単に行えるほか、株式会社アクセスの「NetFront」をベースとしたWebブラウザ「ドリームパスポート」が付属していたため、ネットワークさえつなげばメールを送受信したり、ウェブサイトを閲覧したりすることが可能になりました。これは当時のPCが主流だったインターネットの利用方法を大きく変え、ゲーム機がより多機能化する足がかりとなりました。

※2「100BASE-T」はカテゴリ3UTPケーブルを使える「100BASE-T2」「100BASE-T4」、カテゴリ5以上のUTPケーブルを使用する「100BASE-TX」の総称。

通信のここが凄い!

モデムが標準搭載され、みんなにインターネットのチャンスが与えられたこと!

当時の家庭用ゲーム機においてオンラインコミュニティやオンラインマルチプレイを可能にし、ゲームの楽しみ方を革新しました。

サウンド

サウンドエンジンにはヤマハのスーパー・インテリジェント・サウンド・プロセッサを採用しています。同社が開発した電子楽器のXGフォーマットに準拠した32bitRISCプロセッサを内蔵し、64チャンネルのADPCMが再生可能でした。

この64チャンネルサウンドシステムは、ゲームの臨場感を大幅に向上させることができました。例えば、戦闘中の爆発音、キャラクターの足音、背後から迫る敵の気配など、複数のサウンドを同時に再生し、プレイヤーをゲームの世界に引き込むことが可能でした。

さらに、音色の違う複数の楽器を同時に演奏することも可能でした。これにより、オーケストラのような豊かな音楽表現をゲーム内で実現することができました。

ADPCM方式は今では多く採用されてますが、方式としては自然界の音は多くの場合連続的に変化するという性質を利用してPCMのデータを音質を損なうことなく圧縮しているものです。圧縮率はMP3などに劣ってしまいますが、高速な圧縮展開が可能であることと処理遅延が非常に小さいという性質があるため、データ量の削減とデータ展開の高速性を求める場合にほとんどADPCM方式が採用されています。

サウンドのここが凄い!

ヤマハの高級ハイスペックサウンドを採用したこと!

当時のヤマハはXG音源という高級な音源を搭載したシンセサイザーを発売していました。その技術をベースにゲーム機に搭載したことで、ゲームの音楽も高品質なものになりました。

メディア

ドリームキャストは、ゲームメディアとしてセガとヤマハで共同開発したギガディスク(GD-ROM)を採用していました。通常のCD-ROMと比べて容量が大幅に大きく、最大で1.2GBまでのデータを保存することが可能でした。これは、当時のCD-ROMの約2倍の容量であり、より大容量のゲームソフトを作成することを可能にしました。

構造的にはCD-ROMのピット幅を小さくして容量を大きくする倍密化が行われているもので、以下のように特殊な構造になっています。このGD-ROMはその特殊なフォーマットのために、一般的なCD-ROMドライブでは読み取ることができませんでした。不正コピー対策をハードウェア側で行うハードウェアプロテクトを施す意味も持っていると言われています。

  • 内周部:ISO9660フォーマット 容量約35MB 一般のCDプレイヤーで再生しないよう注意を喚起する音声や、PC向けデータが入っている。
  • 外周部:独自高密度フォーマット 容量約984MB ゲームのデータを格納。最外周部からデータが書き込まれているため、容量が少ないデータでも高速に読み込むことができる。
  • 中間部:データを持たない空間 仕切りの役目。

メディアのここが凄い!

CD-ROMを拡張したGD-ROMを採用したこと!

大容量のGD-ROMを採用し、この後発売されるPS2のDVD-ROM(最大8GB)に食らいつきました。限られた資源の中で高品質なゲームの提供を可能にしました。

ストレージ

ドリームキャストではストレージとして独自のメモリカード「ビジュアルメモリ(VM)」を採用していました。このメモリカードは、通常の保存データ用のストレージとして使うことができるだけでなく、小型の液晶画面とボタンが付いており、携帯型ゲーム機としても使用することができました。また、コントローラにセットすることで手元の画面にゲームと連動した映像を表示することもできました。

「ビジュアルメモリ(VM)」は、16MBのフラッシュメモリを搭載していました。ビジュアルメモリの採用によって、ゲーム体験の一部をメモリカード上で持ち運べるという新たな楽しみ方を提供していました。

しかし、問題も多く抱えていました。1つは、ビジュアルメモリはボタン型電池(CR-2032)を2個使用しますが、使い方によっては数時間で電池切れを起こすほど電池の消耗が異常に早かったことです。記憶媒体はフラッシュメモリなので電池が切れてもデータが消えることはないが、ドリームキャストに通電するたびに大きな「ピー」音(たまごっちやデジモン死亡時のような音を大きくしたもの)が鳴ってしまいました。

もう1つは、搭載されているフラッシュメモリの容量に比して携帯ゲームとしての予約エリアがかなり大きかったため、ユーザファイル容量を少なくしていました。そのため思ってたよりセーブデータが記録できず、当時は不満の声が大きかったこともありました。後に携帯ゲーム機能を排除して全てユーザファイル容量として扱える「メモリーカード4X」を発売しました。

ストレージのここが凄い!

ゲームが遊べるメモリーカードを採用したこと!

メモリーカードにゲームを入れて持ち運ぶことができ、ミニゲーム的に遊ぶことやそれでアイテムを得たりできる新しい体験でした。

消費電力

ドリームキャストの消費電力は、当時のゲーム機としては一般的なレベルであり、約22Wとされています。これは、家庭で安心して使うことができる範囲内の消費電力であり、大量の電力を消費することなく、高品質にゲームプレイすることができました。

一方、当時のPCと比較すると、ドリームキャストはかなり少ない消費電力で高品質なゲームを実現していました。(PCは350W電源を積んで消費電力100〜200Wくらいがライトユーザー層のよくある消費電力)

これは、専用のハードウェアとソフトウェアの最適化により、効率的な電力消費を可能にしていたためです。

消費電力のここが凄い!

高品質なゲームを提供しながらも、その消費電力を抑えて効率的に動作したというところ!

3Dグリグリの高負荷なゲームをプレイしてても22Wという消費電力は驚異的です。そのおかげか巨大なファンも搭載しておらず、それが本体のコンパクトさにつながるのかと理由がわかります。

タイトルとURLをコピーしました